愛国から幸福へで有名になった旧広尾線の駅のいくつかを訪ねてみた。帯広から広尾まで約84㎞の旧国鉄路線で1987年に廃線になった。1973年に「愛国から幸福ゆき」のきっぷがブームになる少し前にこの線に乗ったことがある。そのころはまだ縁起のいい名前だな、ぐらいの感想しか持っていなかった。今回はその記憶をたどって訪問してみた。
次の地図はまだ広尾線が残っていたころの道路地図だ。
広尾線地図
広尾線は国道に沿って走っていることで、常に車との競合となって来た。そして、ついには競争に敗れた形となってしまった。
次の写真は十勝平野を上空から見た光景だ。見ての通り一面の農場だ。今回の広尾線の旅はこのような中を走ることになる。
飛行機から見た十勝平野
帯広駅
広尾線のスタートは言わずと知れた帯広駅であり、帯広線の廃線には係わらず発展をしている。折りしも朝ドラの舞台となったこともあり、賑わっていた。
帯広駅
しかし、帯広駅を先に見てしまうと、この後の駅々の周りはいかにもさびれてしまった感がする。
愛国駅
帯広駅からはわずか１１ｋｍだが、人家は駅周辺などいくつかの集落があるだけで、周りはほとんどが農場となっている。駅の跡地は交通記念館となっており、プラットホームと蒸気機関車の展示があった。蒸気機関車はD9600型（でかくろ）という車種とのこと。ただ、私の乗った４０数年前は既にディーゼルに変わっていた気がする。
国道から旧愛国駅への案内は分岐点のところに愛国駅の表示はあるが若干分かりにくい。国道236号線から道道595線に入ると駅近くに道路標識として愛国駅の表示がある。
愛国駅の駅舎は新しく作られたもので、今は交通記念館として、中には鉄道関係の品々が展示されている。
愛国駅
有名となった「愛国から幸福ゆき」のきっぷのモニュメントが出来ていた。その奥は公園になっている。
愛国駅きっぷモニュメント
ホームや線路は昔のものなのだろうか。いずれも整備されていて、哀愁漂うという感じではなかった。
愛国駅ホーム
大正駅
愛国と幸福の間にある駅だ。大正駅は愛国・幸福のどちらの駅からも約５ｋｍぐらいの所にある。国道には「旧大正駅」の矢印の付いた小さな看板があるだけで分かりにくい。後で調べたら国道236号線から道道419号線に入ると約200mほどで突き当る。その目前の広場の中にある。
両側の駅が有名過ぎて取り残されている感があるが、「大正幸福」で「たいそう幸福」だと語呂合わせがあった気がする。現在は昔風にホームが残されているだけだが、面影を感じる。大抵の人は素通りしてしまっているようだが、なかなか味がある。
周りは「大正ふれあい広場」という公園として使われていた。
大正駅
大正駅を駅舎を模した建物で、トイレとして使われていた。
大正駅
公園の入り口にある看板。ここから先は車は入れない。特別な駐車場は無いようだ。
大正ふれあい広場
幸福駅
幸福駅は帯広から２２ｋｍの所になる。幸福駅は国道に識案内があるが、帯広広尾自動車道の幸福IC方向に曲がり、最初のT字路を左折した先にある。
全体は幸福交通公園となっていて、芝生や花が植え付けられていて、その一角に駅・車両等の展示がある。
駅舎は新しく建て替えられ復元されたようだが、絵馬のように、大きめの愛国駅～幸福駅のきっぷにメッセージを書いて貼り付けるのが流行っているのか、異様な姿になっている。
幸福駅
幸福駅舎の反対側には売店があり、おみやげを売っていた。イチ押しは「愛国から幸福ゆき」のきっぷのようだ。少しお高いのが気にかかった。
幸福駅売店
駅舎の横にはプラットホームとジーゼル機関車が２両展示されていた。車両の中にも入ることが出来るようになっている。さすがにジーゼル車だと今走っているものとそれほど違いが分からない。
幸福駅プラットホームと車両展示
広尾駅
広尾線の終着駅だ。帯広から８４km、現在はバスの停留所となっており、駅舎はバス会社の事務所になっていた。
広尾駅
駅の横が大きな鉄道記念公園となっており、その入口のところに機関車の動輪や信号機、ポイントの切替器などが展示されている。
広尾鉄道記念公園
まとめ
広尾線の沿線は、帯広の街を離れると延々と農場が続く景色だ。古い駅がそのまま残っているところは無いようで、いずれも廃線後に往事に似せて再構築したもののようだが、それぞれ趣きがある。今回訪ねなかった駅も大体が公園か記念碑を残しているようだ。
「愛国から幸福ゆき」という何とも縁起も良く、懐かしさがある駅めぐりは、きっと記憶に残る場所になるだろう。景観や自然の美しさを求める向きにも、畑の中を走る光景が続くだけなので、通りがてらに寄るのは、むしろ楽しいかもしれない。
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