梼原(ゆすはら)から四国カルストへ

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 四国の中西部、愛媛県と高知県にまたがる四国カルスト。石灰岩台地を雨などが溶かし、様々な形の石灰岩を見ることができる。日本の三大カルスト(他は山口県の秋吉台、福岡県の平尾台)のひとつで、標高1400mほどの場所に東西約25kmに連なる石灰岩の台地だ。
 行くための交通機関を調べたが、四国カルストへ行く公共交通機関は見つからなかったので、まずはふもとの拠点として梼原に行き、そこからサイクリングすることにした。
 梼原まではJR須崎駅からけっこうバスが出ている。梼原~四国カルスト一周は、梼原の標高が約500mなので標高差900m、総延長約54kmほどの行程であった。途中自転車にトラブルがあったので余計に時間がかかってしまったが、総時間で6時間半ほどであった。

四国カルストへ行く

梼原・四国カルスト地図(国土地理院地図閲覧サービスより)

梼原・四国カルスト地図(国土地理院地図閲覧サービスより)

須崎駅

 JR須崎駅に着いて、駅の外に出てみる。駅前はロータリーになっていて、駅舎には郵便局が入っていて、中には結構大きくて売店と小綺麗な待合室があるのが印象的だった。
 ここから梼原に向かうバス停が、どこから出るのか分かりにくい。実は駅前ロータリーの先の道の両側にバス停の表示があって、どちらにも梼原の名前が掲げられている。最初は駅から左のバス停に行ったところ時刻表もあるので安心していたら、よく見るとバス停は反対側とある。行きと帰りで違うのかと思ったのだが、実は行きも帰りも駅から見て右側のバス停ということが後で分かった。どちらも駅の先の県道から駅の方に入ってくるためだった。

須崎駅

須崎駅

 須崎駅は歴史のある駅で、高知県で最初に開通したのが、須崎~日下(くさか)とのこと。その記念の碑と動輪が飾ってあった。
 ただ駅前通りはシャッター商店街のようになっていて、看板は出ているもののどこも開いていない。食堂や土産物屋のようなものは見当たらなかった。

 バスまでの時間がずいぶんとあったので、港まで行ってみた。港もずいぶんと静かであった。

梼原

 須崎駅から梼原までバスが1日7本ほど走っており、約2時間に1本ぐらいの間隔だ。所要時間は1時間9分で、やや小ぶりなバスになっているが、通学以外ではあまり使用している様子はなかった。

●レンタサイクル

 梼原の「ゆすはら観光交流案内所まろうど館・梼原千百年物語資料館」で貸し出している。
場所は町役場前の道路を挟んだ反対側で「ゆすはら・夢・未来館」という大きな建物の左隣で、やや引っ込んだところあるのと建物に分かりやすい表示がないので若干迷う。
 なお、敷地中には2つの建物があり、向かって左側が「まろうど館」、右側が「資料館」になっている。どちらも中でつながっているので、どちらから入っても受け付けてくれるが、実際にはレンタサイクルは右の資料館の方での対応になる。

(左)まろうど館、(右)資料館

(左)まろうど館、(右)資料館

 観光目的での旅行者であれば、3日間無料で貸し出している(先に保証金1000円を支払い、戻ってきた時に返金してくれる)。9時~17時まで開いている。自転車とヘルメットを貸してくれる。なお、免許証など身分証明書が必要。

四国カルストまでのサイクリング

 自転車は、50km超の行程のため朝8時ごろ出発しないと余裕がないので、前日の内に借りて翌日の返却とした。

 朝8時に出発、国道440号線をひたすら登っていく。方向は久万高原町、地芳峠(じよしとうげ)方面の表示に従って行く。道は整備されていて走りやすい。ほぼ梼原川に沿って走っているのだが高架のためか橋などの横断時に見える程度だ。梼原の街を抜けると、山に囲まれて田んぼの風景があるが、しばらくすると峠道に入った感じで、山中を走って行く。街中から約10kmほどで地芳トンネルの入り口に着く。ここまで約50分ほどであった。
 ずいぶんと真新しい感じで2010年に開通したのだそうだ。2,984mとあるのでかなり長いトンネルだ。中は照明もしっかりされていおり、安心して通れる。
このトンネルは地芳峠を貫通していて、ちょうどこの上に「四国カルストが」左右に広がっている場所に当たる。

地芳トンネル

地芳トンネル

 トンネルを抜けて、すぐに「四国カルスト」の表示板がある。ここから県道36号線に入る。
ここまでは、梼原から約13km、標高が700mほどになる。梼原の標高が500mほどなので、200mほどしか登っていない。よって、ここまでは緩やかな登りだったが、四国カルストの標高が1400mほどなので、さらに700mを登って行かなければならない。

県道36号線との分岐点

県道36号線との分岐点

 36号線に入った所からしばらくは、ほぼ平坦な道が続く。36号線をそのまま進むと四国カルストの西端辺りまで行って、四国カルスト公園縦断線(県道383号)につき当たるが、途中、林道になるのだろうか、中久保交差点という三叉路があり、四国カルスト方面の表示がある、ここを進むと地芳トンネルの上あたりに出る近道になっている。問題はこの区間で、一気に登っていくため、かなり勾配がある。
 実は、自転車の整備不良があって、サドルの高さの調整が出来ず、力が入らない。電動自転車だというのにかなりきつい。結局、この区間6kmほどの半分以上を自転車を押して登るはめになってしまった。

36号線から四国カルスト方面

36号線から四国カルスト方面

 山道をやっとの思いで抜けると、県道383号線に合流する。ここを真っ直ぐ進めば「四国カルスト」へ向かう道だ。
 ここからさらに登りが続き、鶴姫荘(めづるそう)という宿泊件食堂のような施設があり、ここから先にカルスト台地の様相が見えてくる。出発から3時間、36号線に入ってから1時間45分かかっていた。とにかくここまでがきつかった。

 ちなみに、ここで電気工事をしている人がいたので、六角レンチを借りて自転車のサドルの調整ができたので、取りあえずは、難を逃れることができた。

姫鶴荘

姫鶴荘(めづるそう)

四国カルスト 

姫鶴荘からの道はアップダウンはあるが、そうきついスロープではない。
 五段高原方面に向かって進んで行く。先にはなだらかな山が草原に覆われ、いくつのも石灰岩が地表に現れた光景を見ることができる。
 県道の右側は柵があって入れないが、左側には降りる道があり、車も通ることができそうだ。

五段高原周辺

五段高原周辺

 姫鶴荘からしばらく行くと牧場らしきものがあるが、ちょうど放牧はしていない時期だったようだ。

牧場

牧場

 五段高原の手前で、下の道に降りてみる。舗装はされていないが、そう走りにくくはない。
 この辺りが、四国カルストの石灰岩の連なる姿を最もよく見ることのできる場所だ。

五段高原

五段高原

近づくとさまざまな形の石灰岩が無数に並んでいる。

 県道に戻って姫鶴荘の方を振り返ると、広大な四国カルストを感じることができる。

五段高原から姫鶴荘方面

五段高原から姫鶴荘方面

 五段高原をさらに東に進むと、天狗高原に出る。実はどこが天狗高原なのか判然としない。地図からどうやら県道の南側(右側)の小高い丘がそのようだ。
 一番高い所に展望台があり、そこまでは人の通れるぐらいの小径が、様々な方向に続いている。ちょうど春の芽吹きの前に野焼きをしたようだ。展望台の周辺までの草地が黒く残っている。その中に白い石灰岩がひときわ目立って見える。

天狗高原

天狗高原

 四国カルストを満喫したので、梼原まで帰る。天狗高原をそのまま東に進むと、天狗荘という宿泊や食事のできる施設と、カルスト学習館という施設があり、その間を右折するように進めば梼原方面になる。
 ここから約20kmほど国道197号線に出るまで、ほぼ下り坂が続く。帰りはひたすらスピードを抑えながら走る。
 天狗荘の分岐点からは県道48号線になるが、この道をそのまま行っても梼原に戻れるが、途中で「幹線林道」に入ると近道になる。林道と言っても道は舗装され2車線で走りやすい。ただ、道路標識として手前に表示がないが、分岐点に大きな看板がある。国道439、国道197号線方面とあるので、その道を行くと良い。あとはひたすら道なりで降りて行く。

神在居(かんざいこ)千枚田

 197号線まで下りてきて、梼原の街へと向かう途中に、「神在居(かんざいこ)の千枚田」という場所があるとのことで寄ってみることにした。作家、故司馬遼太郎が、天に向かって幾重にもなる田の光景を見て、「農業が築き上げた日本のピラミッド。万里の頂上にも匹敵する」と感嘆されたという場所だと案内に書いてあったので期待して行ったが、まだ季節が早く田んぼは田植え前で何もなく緑に覆われた壮大な姿は見ることができなかった。

 なお、この千枚田に行くのに、須崎からバスで来たとき、バス停として「神在居」という停留所があったが、「神在居」で降りると神在居の村落に入ってしまう。実は千枚田の展望台のある場所はその一つ手前「神根越(カミネコシ)」というバス停から登ったところにある。なお、道路には小さいが看板が出ている。

神在居入口

神在居入口

197号線から100mほど登った所に展望台がある。千枚田を見ることはできたが、田植え前で、田んぼにはまだ稲がなく、絶景とはいかなかったが、段々畑の様子は見て取れる。

神在居の千枚田

神在居の千枚田

 神在居から梼原市街へは約3kmほど。197号線は高野というところから乗ったが、そこから梼原まではずっと下りなので自転車には優しい。ただ、途中に4つトンネルがあるがいずれも古く、照明が良くない。距離が短いので昼間ならばなんとか見えるが、薄暗くなってくると真っ暗になりそうなので、自転車の照明だけではおぼつかない。注意が必要だ。
 なお、197号線から自転車を返す資料館へは、途中で役場前というバス停の少し先の道を右折すると近い。朝8時に出発、14時30分に到着し、サイクリングを無事終えることができた。

まとめ

 梼原を拠点に、四国カルスト一周のサイクリングを行ったが、総長54km、6時間半のコースだった。コースそのものは、四国カルストに行くまでの上り坂がけっこうきついだけで、カルストに着いてからのサイクリングは、登り勾配の道だが、道路も整備されており、そう急でもないので、景色を見ながらサイクリングを楽しむことができた。カルストからの帰り道は、ほとんど下り坂で、自転車をこがなければいけない場面は少なかった。むしろ結構なスピードが出てしまうので抑える方が大変だったかもしれない。道は県道からカルストの中の道に入れば別だが、全て完全舗装されていて走りやすい。
 なお、自転車はレンタルだったが、今回は借りた自転車にトラブルが発生した。1つはサドルの高さを調整する部分がレバーで締め付けるタイプで、その締め付け方が緩くなっていたため、レバーを下げても十分に締まらず、結局サドルの一番低い状態のままで走らなければならなかったので、力が入らず急坂は押して歩くはめになった。もう1つがパンクだ。帰り道で空気が減っているのに気づいた。あと20kmほどで終わるのだが、この距離を押して歩くのは悲劇なので、出来るだけ空気の残っている間に先に進んだ。下り坂であったので、空気のある内にほとんど下りきれたが、最後の6kmほどは押して歩くはめとなった。
 レンタルだったので整備は大丈夫だろうと高をくくっていたので、確認と準備が不十分だった。強いて言えば、瞬間パンク修理剤ぐらいは、この距離を行く場合は準備しておいた方が良かったのかもしれない。

 ともあれ、無事サイクリングを楽しむことができた。登りは若干きついが、全体的には容易なコースなんだろう。特に、四国カルスト台地での高原の爽やかな空気と広大な眺めに加え、奇岩の続く楽しさは、絶好のサイクリング場所と感じた。車であれば四国カルストの姫鶴荘でも自転車を貸し出していたようなので、台地の上だけでも楽しむといいかもしれない。あまり観光地として紹介されていないような気もするし、交通の便は決して良くはなく、特に梼原から先はカルストまでタクシー以外は公共交通機関がないので、敬遠してしまいそうだが、ぜひ行ってみる価値のある所だと思った。

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