四万十川を巡るにはいくつかの方法がある。定期観光バスとしては高知西南バスの「四万十川バス」というのがある。JRの江川崎駅と土佐くろしお鉄道の中村駅を結んで、バスでの観光案内とオプションで遊覧船やカヌーに乗るコースなどがある。土・日・祝日や連休などにのみ運転なのと、1日に1本だけなので旅行計画をうまく作る必要があるが、かなり充実している。
路線バスは江川崎駅と中村駅を結んで走っているが、1日に3往復しかしていないので、スポットで行きたい場所だけ、ということであれば利用できる。
車やレンタカーであれば最も容易だが、それ以外にも観光タクシーのように駅のタクシーを使用することも出来る。「おもてなしタクシー」 というステッカーを貼ったタクシーが中村駅にあるので利用するのも良いかもしれない。
そして、もうひとつのお勧めはレンタサイクルだ。、市の観光協会や民間でも貸し出しをしている。ホテルによっては自前の自転車を持っているところもあるようだ。
なお、今回はレンタサイクルを利用して四万十川沿いを走ってみた。
四万十川のサイクリング
以下は、土佐くろしお鉄道「中村駅」からJR四国「江川崎駅」間の沈下橋と主な施設の位置を地図だ。サイクリングで全工程を走ると片道42kmほどあり、約4時間のコースとなる。
沈下橋はそれぞれに特徴や景観の差はあるが、橋そのものはコンクリート製の橋で欄干がないだけだから、珍しいが、そう大きな変化はない。やはり、水の美しさや山々の間をゆったりと流れる川の趣こそがすばらしい。そして、それはどの地点でもそれぞれに味わうことができるので、時間の余裕と体力でどこまで行くかを決めれば、短い時間でも十分楽しむことができる。
なお、川に沿って走っている道のある部分は、中村側から佐田沈下橋の途中までで、あとは川から離れていたり林の中だったりで、近い場所あるいは高い場所から川を眺めながらのサイクリングというようにはならないのが残念だ。もっとも、四万十川が一度大雨が降れば暴れ川に変わるということを考えれば、川岸から離れて道があるのも当然のことだろう。
四万十川の各スポットへの距離・概算時間
土佐くろしお鉄道の「中村駅」からJRの「江川崎駅」までの行程の距離と概算時間(車と自転車)を四万十市の観光案内マップから表にしてみたので、計画を立てる上でのおおよその所要時間の参考になると思う。
以下は、いずれも中村駅からの計算で片道の距離・時間で、各スポットを必ず通る計算になっている。よって、一部を抜いて国道を通るなどすれば、その分短縮することができる。なお、各スポットでの写真撮影や軽い休息程度は含まれるが、食事や長い時間の休息の時間は含まれていない。
観光スポット | 中村駅からの概算距離 | 車での所要時間 | 自転車での所要時間 |
赤鉄橋 | 2km | 5分 | 15分 |
佐田沈下橋 | 8km | 20分 | 50分 |
三里沈下橋 | 11km | 25分 | 1時間 |
高瀬沈下橋 | 16km | 35分 | 1時間40分 |
勝間沈下橋 | 20km | 45分 | 2時間 |
口屋内沈下橋 | 26km | 50分 | 2時間35分 |
岩間沈下橋 | 34km | 1時間 | 3時間10分 |
江川崎駅 | 42km | 1時間15分 | 4時間 |
レンタサイクル
レンタサイクルは市の「観光協会」と「四万十川りんりんサイクル」のふたつがある。
「観光協会」は拠点が中村駅のすぐ近くにある観光案内所が拠点で、案内所で借りて案内所に戻すという方法のみで、比較的短距離に向いている。シティサイクル・マウンテンバイク・電動アシスト付きシティサイクルがある。
「りんりんサイクル」は拠点は7カ所あり、中村駅の観光案内所と江川崎駅のふるさと案内所と途中5カ所の拠点があり、そこでも借りることができ、乗り捨ても出来る。長距離を走る場合や途中の拠点まで行って借りて周辺を回るなどの自由度がある。車種はマウンテンバイクのみ。
中村駅(観光案内所)
駅を出て左側の突き当りに観光案内所がある。朝8時30分から開いている。これから向かう道は比較的平坦だが、江川崎駅に向かっては登り勾配で、途中若干のアップダウンもあるので、念のため電動自転車にした。この時は5時間2,000円で、保証金1,000円(返す時に戻って来る)を払い、自転車とヘルメットを借りる。案内図をもらい簡単な工程の説明を受ける。なお、荷物は案内所で無料で預かってくれた。5時間だと勝間沈下橋ぐらいが限度とのことで、勝間沈下橋までの往復のコースとした。
中村駅~佐田沈下橋
中村駅から街中を通って通称・赤鉄橋(四万十川橋)に向かう。土佐くろしお鉄道は基本東西方向へ延びているのだが、中村駅の辺りだけ南北に走っているため、駅と川との方向感覚が若干狂う。駅の真正面の方向が四万十川になる。しかし、真っ直ぐには行けないので、駅前の信号を右折して中心街へと向かう。途中線路を渡って最初の信号のある大通りを国道439号線方向へ左折する。そのまま進むと赤い橋が見えてくる。
赤鉄橋を渡ると、堤の上に道路がある。赤鉄橋周辺など一部車の乗り入れ禁止の所があるが、原則は車も通る道なので注意が必要だ。
堤の下は河川敷になっていて、道も整備されている。河川敷に降りることができるのは、この赤鉄橋の前後1.5㎞ぐらいの区間だけで、橋のところ以外で川に近づくことは出来ない。なお、道はほぼ砂利道で運転はしづらく乗り心地も最悪なのは覚悟して走った方が良い。
堤の上を走って行くと、折りしも桜の満開の公園があった。四万十川桜づつみ公園と言う場所だ。高知市内で満開時期が4月2日とあったので、1週間弱ほど遅いようだ。
公園を過ぎると両側は藪や木で覆われ川を望みながらのサイクリングとはならない。所々から川の見える場所もあるが、展望はあまり良くない。
途中に佐田遠望所という小屋があり、休憩と佐田沈下橋を遠くに望むことができる。緩やかな流れにかかる橋が、何の装飾もなく、自然に溶け込んでいて郷愁を感じさせる。
途中の田んぼ、川はずっと先の下の方だ。
佐田沈下橋に到着。中村駅からは8kmだが、結構走った感がある。中村駅から一番近い沈下橋で多くの人が訪れるようだが、当日は誰もいなかった。
沈下橋は欄干のない橋ということで、そう大したものではないと思っていたが、いざ見てみると、欄干がないだけで、こんなに違って見えるものかと驚いた。
橋そのものは鉄骨とコンクリートでできているので年代を感じさせるものは無いのに、なぜか山と川の景観になくてはならないもののような印象を与えている。
橋の上は乗用車かマイクロバス程度なら1台が通れるぐらいの幅がある。途中に一応すれ違えるように道幅が広くなっている所があった。
橋を渡ったが、欄干が無いというのはこんなにも不安なものかと思った。橋の高さはそう高くはないが、水の流れが結構あり、しかも底が見えるので端を歩いていると少し怖い。観光案内所で、たまに落ちる人がいるので通るときは上流側を歩くように言われた。落ちたとき橋げたにつかまるためのようだ。
橋の上からの景観。川の流れがおだやかで山の緑に映えて美しかった。
三里沈下橋
佐田沈下橋のさらに上流にあるのが、三里沈下橋。
佐田沈下橋を渡って、上流に向かって右岸を県道430号線沿いに走るが、道の両側は木に覆われている。なお、三里沈下橋に行くには左岸を通る道もあるが、山道でアップダウンが大きいのでやめた方がいいと観光案内所で言われた。
しばらく走ると、いきなり採石所の中の道路のような所がある。砂利が大量に置かれ、工場のようなものもある。ここを過ぎてしばらくすると三里沈下橋への分岐点の表示がある。そこから川に向かって降りて行くと沈下橋が見えてくる。
下の遠景の写真は、実はここまでの行程では見えず、少し上流側に進んだところから見えたもの。
三里沈下橋は佐田沈下橋と比べると長さは短く、幅も狭いようだ。
当然、車は1台しか通れないが、途中にすれ違い用の場所もない。もっとも、橋の先が比較的開けているので、車が来たら橋の手前で待つことができるということだろう。なお、自転車を引っ張っているときに車が来たら川に落っこちそうだ。
三里沈下橋辺りは、本当に静かな所で、自然の中に溶け込んでしまいそうだ。
高瀬沈下橋
三里沈下橋から県道430号線に戻って、川を左にして上流側へと進む。途中の曲がり角も全て左方向へと向かえば良いのだが、途中で大きな道に出る。これは国道441号線で、往きはこれに沿って進めば良いのだが、気を付けなければいけないのは帰りで、この曲がり角が実に分かりにくい。しっかり記憶しておくことをお勧めする。帰り道でトンネルがあったら違う道を走っている。それは441号線を走って曲がり角を行き過ぎたということだ。ただ、そのまま行っても中村駅へとつながっているので、帰りはその道で帰ることも出来る。
三里沈下橋から登り勾配で5kmほど、結構時間がかかった気がする。途中に高瀬沈下橋への矢印が出ている。川側へ左折して降りて行くと沈下橋が見えてくる。
この橋も幅は狭いが長さは結構ある。
川を渡っていくと遠くに屋形船が見える。大きな川に小さな船がゆったりと動いていて、のんびりとしたした景観がまた美しい。
勝間沈下橋
次は勝間沈下橋へと向かう。国道側を通らずに、上流に向かって左岸を遡る。道は車が1台通れるほどの細い道だ。初めは田んぼや畑の中、たまに人家のあるようななだらかな道だが、途中から山道のようになる。登り勾配でカーブが多い。この区間も四万十川を望めることのできる場所はほとんどなかった。
山道の登り勾配が終わって下りになるころに、木々の隙間から勝間沈下橋を望むことのできる場所があった。この橋と川が見えたのは後にも先にもここしか無かったようだ。
さて、もうしばらくだと先を進んで行ったのだが、そのまま急勾配の山道に入ってしまった。いかにせんおかしいので引き返すことにした。実は、地図から勝間川と言う川に沿って行けば沈下橋があると思って、川を目印にしていたのだが見落としていた。実は、その川がまったくの小川のような小さな流れだったので気づかなかった。その勝間川には小さな橋が架かっていたので、ここかと分かった。また、沈下橋への曲がり角には案内表示もなく、かつV字に右に急カーブして、かつ土手の下にあるので、上から降りてくると曲がり角があることが分かりにくい所だった。
勝間沈下橋は、川にかかる部分は短いが前後の道路が真っ直ぐ繋がっていて、その先に吸い込まれるような感じの橋だ。たまたま車が通っていた。
この橋の上流側は、ゆったりとした流れとなっている。
一方、下流側は、見た目では穏やかだが、こちら側の右岸の岩の手前辺りは水深が18mもあり渦を巻いているので危険という表示があった。やはり自然には怖いところがある。

勝間沈下橋からの景観(下流側)
今回は、この勝間沈下橋で終わりにして戻ることにした。ほぼ同じ道を戻って帰ったが、往きは色々見ながらだったことと、登り勾配であったことなどで、2時間10分、帰りは1時間30分かかった。合計4時間弱で観光案内所の往復40km、約4時間程度というのはほぼ正確だった。
まとめ
今回行ってみて、どのように行くのが一番いいのかという比較はできなかったが、サイクリングの場合、川沿いを通る道があって、川面を見ながらという期待は若干外れた。特に佐田沈下橋以降は一般道路だったり、山中の道だったりで川を見ることのできるのは沈下橋のところまで行かなければできない。
もちろん、沈下橋に降りれば、その周辺の自然の中に溶け込み、春だったこともあり、ウグイスやカジカガエルの響き渡る声がより静寂さを演出してくれて、四万十川の自然を楽しむことができた。
なお、中村~江川崎間だけを言うなら、あまり大きな景色の変化はないように思えた。たぶん勾配がそれほどなく、流れがどこも緩やかで、町からすぐに山並み入り、ずっと蛇行して流れているためだろう。もちろん個々の景色に違いがあるのは当然だが、言いたかったのは、どの地点でも四万十川の自然を楽しむことができるということだ。そして、たぶん佐田沈下橋までが一般的な観光用に整備されていて、それより上流側が手つかずのままにある感じはした。
ただ、望むらくは、遊覧船とかカヌーとか水と親しむようなことができたらなお良かったかなとは思う。残念ながら曜日の問題などで観光客がいなかったせいかどこも営業していなかった。これは事前に調べて行った方が良いだろう。
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