11月に屋久島の外周を車で一周してみた。屋久島空港を起点に時計回りで、枕状溶岩-安房港-ヤクスギランド-紀元杉-トローキの滝-千尋の滝-中間ガジュマル-大川の滝-西部林道-いなか浜-宮之浦港-屋久島空港の順に回るやや欲張りな計画だったため、一部立ち寄れない所もでてしまった。
屋久島は国立公園、世界自然遺産の地であり、山奥深くにヤクスギが密かに生き延びる神秘的な絶海の孤島というイメージを抱いていたが、鹿児島県大隅半島の佐多岬から約60kmしか離れておらず、鹿児島空港から飛行機で40分、鹿児島港から高速船で1時間50分、フェリーで4時間と意外に近い。島全体が山という感じで、集落は海岸線に、しかも主に北東部に点在する。到着1日目はレンタカーを借り、島を一周してみることにした。島の周囲は約130kmとのことで、立ち寄り時間を含めて6時間ほどを考えていた。外周を県道が1周しており、この周辺だけを回るだけなら大丈夫と思うが、今回はヤクスギランドまで行くこととしたため、かなり厳しい時間配分になってしまった。ヤクスギランドを含め、ゆっくり回るなら8時間以上の余裕が欲しいところだ。
また、当日は雨が途中で降り始めた。屋久島に雨の多いことは知っていたが、半端な雨ではなかった。豪雨に近い。上下のカッパなど雨の準備は十分にしておく必要がある。
屋久島空港に10時55分の飛行機で到着
ちなみに、私には初めてのプロペラ機だった。空港施設ヘは徒歩で移動。
レンタカー会社は空港周辺に6店舗ほどあり、ほぼ、大どころの会社は揃っている。予約してあれば空港に迎えに来ている。
なお、レンタカーで気をつけなければいけないと気付いたことは、ナビの問題だった。会社ごとの使い勝手の問題もあるが、行き場所が検索できないことが結構あった。元々登録されていないところもあるが、読み方が違うために検索できないことが多かった点である。なお、当たり前だが、時計回りに回ると必ず左が海、右が山だから、立ち寄りのため県道との出入りが多いが方向感覚を失わないで良い。
さて、レンタカーを借り、屋久島を空港から時計回りに一周を開始した。レンタカーの契約などで出発が12時20分頃になってしまい少し出遅れてしまった。
その後、立ち寄ったところについて紹介していく。
枕状溶岩(まくらじょうようがん)
空港からは5㎞弱で、道路上に案内表示はある。ただし、入る道が細いのと道路脇の草で曲がり角が分かりにくい。横断歩道や十字路の表示などはないからスピードを落として確認が必要だ。海側に曲がって道なりに海岸線へ降りていくと行き止まる。そこに駐車して、林の中の道を歩いて海岸線へ降りていくと荒波打ちつける海岸線に出た。出たところに石碑があり、海に向かって黒い色の異なる岩がある。それが枕状溶岩のようだ。枕状には、はっきりとは見えない。
屋久島には火山が無いというのに溶岩があるというのが珍しいとのこと。
案内によれば、「一億年程前にここより遥か南東の海底で噴き出したものが、フィリピン海プレートの動きに乗り少しずつ北西に移動し、ユーラシアプレートの下に潜りこむ琉球海溝の所で砂や泥の層(後の熊毛層群)と一緒になって海上に現れたもの」とのこと。
珍しさもさることながら、この海岸の荒々しい雰囲気は一見に値すると思う。
安房港(あんぼうこう)
「屋久島の南東岸にある港で、安房川の河口部に位置している。かつては屋久杉の積み出し港として栄え、安房森林軌道が乗り入れていた。フェリーなど屋久島への主要航路は島の東北岸にある宮之浦港を発着するが、種子屋久高速船のジェットフォイルの一部が発着する」と案内にある。空港から約9km。
特に変わったところはないが、「ショッピングセンターばんちゃん」というAコープがある。空港から向かって港入口の標識を左折して、港に向かって下って行くカーブの先の右側にある。近くに来るまで気づかなかった。この後、店があまりないので、必要な物はここで買い込むと良いだろう。
ヤクスギランド
ヤクスギランドは「安房川の支流、荒川の上流にある面積270.33haの自然休養林で、安房港から約16km、空港からは25㎞ほど、入り口のところで標高約1000mある」そうだ。
安房港を通り過ぎて、すぐにヤクスギランドへ向かう道に右折。ここからは上り道が続く。途中に縄文杉方面への登山に向かう屋久杉自然館を通って、さらに登って行く。道は整備されているがカーブが多いのと、途中から道が狭くなっており、大型バスも通っているため、すれ違いに注意が必要。ときどきヤク猿が出現。
ヤクスギランドでは入場料を払って入るが、白谷雲水峡の割引券が付いているので、後日行く人は無くさないように。
林内はいくつかのコースに分れ、大きく30分(0.8㎞)、50分(1.2㎞)、80分(2㎞)、150分(3㎞)のコースに分かれている。ヤクスギ以外にもツガ、モミなどの大木が見られる。
ヤクスギランドは世界自然遺産地域ではないそうだが、国立公園の中とのこと。
なお、中にはトイレが無いので、入口の道を挟んで反対側に森泉(しんせん)という休憩所とお土産を売っている建物があり、そこのトイレを借りることができる。なお、トイレはチップ制。
今回は時間の都合で80分コースを回った。その景観は以下のようだった。
入口を入るとすぐに原生林の中にいる雰囲気を感じられる。
歩くと、すぐに「くぐり栂(つが)」がある。一番最初は杉ではなかった。
しばらく歩くと荒川の支流にかかる林泉橋を渡る。
途中の切株更新の様子。切株更新とは伐採された杉は枯死してしまうが、その切り株の上に新たな杉が芽を出し生長したもので自然のたくましさを垣間見ることが出来る。
続いて、千年杉。ヤクスギとしては若い杉とのこと
荒川橋(吊り橋)を渡ると、ここからは登山道になり、上り道で足元も悪くなる。しばらく歩いていくと道は分岐しており、苔の橋方面へ左折するのが80分コース、そのまま真っ直ぐ進むと150分コースになる。今回は80分コースなので左折。
苔の橋は木製の橋だ。苔は河原の岩場の苔をさしているのだろう。ここで河原に降りることが出来る。橋より周りを見渡すと奥深いところに来た雰囲気を感じる。
橋を渡って80分コースは左折だが、すぐ近くに150分コース上にある三根杉(みつねすぎ)という大木があるとのことで、ちょっと寄り道をした。
引き返して、帰路に向かう。沢津橋という橋を渡ると出口方面に向かう後半のコースになる。
しばらくすると仏陀杉が現れる。80分コースの中では最も長命な杉だそうで樹齢1800年とある。ごつごつしていて、なるほど顔のようにも見える。
この仏陀杉の前後の道は仏陀杉歩道と言うようで、この周辺は、杉の伐採後に残された枝や幹(土埋木(どまいぼく)と言うそうだ)、歩道の表面に杉の根が覆っているなど、うっそうとした森の景観と重なり合い、山道を歩いてる雰囲気は十分だ。
次に、双子杉という、幹の途中から、ほぼ均等な形で2本に分かれた杉だ。
そして、コースの最後に現れるのが、くぐり杉。入り口はくぐり栂だったが、最後は杉で締めくくっている。
くぐり杉を通ると、清涼橋があり、ここを渡ると、もうすぐ出口となる。
80分コースで、若干寄り道もあったが、ほぼ80分は優にかかった。最も長いコースは210分というのがあるから、ヤクスギランドをフルに楽しむには半日は必要なのだろう。なお、当日は途中から雨がひどくなってしまったが、1000m級の山の中であること、80分以上の長いコースは登山と変わらないので、雨具や履き物は登山の準備をしておく必要があると感じた。
紀元杉(きげんすぎ)
「ヤクスギランドより車で15分、標高約1,200メートルの安房林道沿いにあり、屋久島で唯一、車窓から見ることができる屋久杉で、樹高19.5メートル、胸高周囲8.1メートル、推定樹齢3,000年。木の先端は枯れてるが、斜面の下側から見ると樹勢を感じさせる。ヒノキ、ヤマグルマ、アセビ、ヤクシマシャクナゲ、ナナカマドなど約12種類の着生樹があり、樹上に育っているとは思えないほどの大きさに育っている。」とのこと。
実はヤクスギランドを出たときに、豪雨になってしまい、時間も予定より経ってしまっていたため紀元杉に行くのは断念した。よって、案内の内容だけだが、ヤクスギランド全体の中では最も年代の経った杉だったので、ちょっと残念。
トローキの滝
ヤクスギランドから約24km、40分ほどで到着。安房港 からだと約11km。
「落差約 6m で海に直接落ちる滝(海岸瀑)。海に直接落ちる滝は珍しく、知床のカムイワッカの滝と、屋久島のトローキの滝だけで、滝の音の「轟き(とどろき)」から、「トローキ」に変化したといわれる。この川(鯛之川)の上流には千尋の滝、竜神の滝がある。」との案内である。
車で行くと、道路案内が有ったのかは分からなかったが、実は行き過ぎてしまった。途中で気付いて調べたところ「ぽんたんかん」という店が山側の方にある。これを目標に戻って行き着いた。「ぽんたんかん」の駐車場に車を止め、県道を横断したところに滝の入り口があった。
こんなところに滝があるとは思えないところだ。入り口から下って展望台に着く、海よりずいぶん高いところと思ったら、木々の間から対岸に滝が見える。
なお、屋久島の道路はほぼ海を見渡すことができないので、海が見えたのは新鮮だった。
千尋の滝(せんぴろのたき)
トローキの滝から約4kmほど山を登っていきます。約20分。
「落差約60メートルで、滝の左側には250メートル×350メートルに達する、巨大な花崗岩の一枚岩があり、 まるで千人が手を結んだくらいの大きさということで「千尋の滝」と名づけられました。」と言うことで、初めは「ちひろのたき」とか「せんじんのたき」と思っていたのですが、長さの単位の尋(約1.8m)だったんですね。
駐車場からは滝の雰囲気もありませんが、西側に5分ほど歩くと展望台がありました。また、東側にも約5分ほど歩くと展望台があり、東側よりやや高い位置から全周を見渡すことが出来ました。天気が良ければ海も見えるようです。
中間ガジュマル(なかまがじゅまる)
千尋の滝から約22km、約50分、トローキの滝から直接なら約18km。
中間集落のほぼ中心にある巨大なアーチ状のガジュマルということで、中間と付くのは地名でした。他に来ている人もいなかったのでちょっと分かりにくいところで、突然現れるので近づくまで確信が持てませんでした。
ガジュマルって何かなと調べてみると「奄美群島を含む南西諸島や熱帯アジアなどで見られるクワ科の常緑高木。枝や幹から多数の気根を垂らす」とあり、幹から根が垂れ下がってアーチのようになっているんですね。
大川の滝(おおこのたき)
中間ガジュマルから約7km、15分ほど。県道から少し山側に外れたところにある。駐車場は道を突き当たって左側、滝は右側にあり、滝近くまで車で入れそうだがUターン出来る場所はない。
「大川の滝は里にある滝としては一番大きく、88メートルの落差を豪快に流れ落ちます。」とある。これまで見てきた屋久島の滝は遠景ばかりだったが、この滝は目前に見え、滝壺まで行くことが出来る。
大川の滝を出た時、もう17時ちょっと前になってしまっていた。空港に朝11時頃に出たので、ここまでで6時間かかってしまった。この後、空港のレンタカー会社まで行くと約53kmあり、ガソリンを入れて返すとすれば1時間30分はかかると見て、後はひたすら空港へ向かって帰ることにした。
ただ、一周にこだわったので西部林道を通って帰ることにしたが、実はこれまで来た道を戻った方が10kmほど近く、道路事情も良いので1時間ほどで帰れたのではないかと思う。
西部林道(せいぶりんどう)
大川の滝から約8km、20分ほど走ると右が山側で木が覆い被さるように、左は海側で崖となっている。どこから林道になったのか判然としなかったが、林道に入っているだろうことは雰囲気から分かる。
「西部林道は屋久島で唯一、海岸線から世界自然遺産に指定されている地域で、約12Kmの林道となっており、林道の中でも道幅の狭い部分が約9Kmほどある。」
初めは比較的道が広いが、急に狭くなりカーブもきつくなる。ここで事故でも起こしたら連絡が取れるのか不安になるほどで運転はいっそう慎重になる。
道の狭い区間はマイクロバスが通れるぐらいで、すれ違いはカーブの所にあるわずかな場所を利用しないと出来ない。カーブで先が見通せないので対向車がこないかヒヤヒヤものだ。ガードレールの無いところもあったり、カーブだらけだから運転に自信の無い人はやめた方がいい。
今回は11月で17時を過ぎてしまったので、途中から真っ暗になってしまった。当然街路灯も無いからスピードも出せない。しかも夕方になると、ヤクザルやヤクシカなどが、そこここに現れてどいてくれない。恐る恐る轢かないようにゆっくり走るなど気が抜けない。
結局西部林道の大半は途中から真っ暗になってしまったので、景色は見えなかった。感想は運転が怖かったということだけだが、昼間はたぶん風光明媚なところなんだろうと思う。
いなか浜
西部林道を抜けると、いなか浜があり、「急峻な海蝕崖に囲まれた屋久島では数少ない貴重な砂浜。花崗岩が砕けた黄色い砂が1kmほど続いている。また、日本一の海がめ産卵地として知られ、貴重な湿地としてラムサール条約にも登録されている。」とのことで、当初は寄る計画をしていたが、パスせざるを得なかった。屋久島の海岸を見るチャンスだったのに残念ではあった。
宮之浦港
ここも通過しただけだが、大川の滝からは約43km、1時間10分ほど、宮之浦港から空港までは約12kmで20分ぐらいかかる。
宮之浦港は屋久島の北東岸に位置する港で、鹿児島,種子島への定期フェリーや高速船が就航している。古くは屋久杉の積み出しが盛んだったそうで、平成5年に日本ではじめて「世界自然遺産」に登録されたことから、観光の一大拠点となっているとのこと。
後日、宮之浦港に寄ったが、フェリー乗り場と高速船の乗り場は100mぐらい離れている。港の周りは駐車場になっていて商店街のようなものは無かったが、乗り場やその近くに道の駅があり、お土産などを売っている。船がいないときは人もまばらで静かな港だ。
港を通過し、空港に着いたのが18時半になってしまい、空港前のガソリンスタンドに寄って給油し、レンタカーを返したのが18時40分頃と大幅に遅れてしまい、本日の旅は終わった。
まとめ
午前11時空港着で一周して18時にレンタカーを返すという、7時間で何とかなるだろうという計画は少し甘かった。
島一周は約130kmだが、ただ回るだけでも3時間半ぐらいと聞いた。ヤクスギランドに寄ると外周道路から往復だけで1時間以上かかること、西部林道が思うようなスピードでは走れないこと、他の観光スポットもそれぞれ脇道に結構入ることなど、思った以上に時間がかかった。
今回は寄れないところが出てしまったが、ヤクスギランドに行く場合は、その時間をどう取るかを事前に決めておく必要がある。ここが肝だ。外周道路とヤクスギランドの往復1時間+ヤクスギランドの観光時間、紀元杉に行くならさらに1時間ほど考慮しておく必要がある。
そして、今回、経験したのが雨だ。途中から降り出した雨は豪雨と言って良かった。いつもそうなのかは知らないが、屋久島は雨の多い気候ということ、地元の人も降るときは半端ないと言っていたので、雨具の用意と共に、車の運転に注意し時間もそれなりに余裕を持つ方が良いと感じた。
総じて、道路は西部林道の狭いところを除けば走りやすい。起伏やカーブが多いせいか比較的運転はおとなしい人が多かった。
島の外周を通っているのだが海の見える所は少なく、町を離れるとほとんど山の中という感じで、それはそれで気持ちの良いドライブであった。
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