屋久島と言えば縄文杉と言うぐらい有名なので訪れる人も多いが、11月になるとそこを独り占めできるということで時期を決めた。片道約11.5km、その内初めの約8kmがトロッコ道、残り約2.5kmが登山道。往復10時間のコース。当日も多くの人がガイドを付けていたが、私は単独で登ったがコースが整備されているので特に問題は無かった。ガイドは安心のためや、途中での説明を聞きながら登りたいという人が考えれば良いと思う。なお、トロッコ道は勾配も少なく、切れ目なく木道になっているので歩きやすい。一方、登山道に入ると急に本格的山道に変わる。木道やはしご段なども整備されているが、大きな石・岩を登る部分も多く、段差もある。気をつけたいのは雨の日は足場が悪くなりそうな点だ。雨の多い島なので、登山靴とレインウェア-は必須だ。
宮之浦~荒川登山口
宿は、宮之浦の一角だったので朝4時宮之浦港出発のバスに乗った。屋久島自然館行きで到着は4時48分であった。
なお、町を出てしまうと、店は全くないし、早朝で港の近くも全く開いていない。前日までに朝食・昼食および飲料水の準備が必要だ。弁当はいくつか弁当屋があるので前日に頼んでおけば出発前に玄関に準備しておいてくれる。私はAコープが近くにあったので、そこで買い込んでおいた。
バスは屋久島交通とまつばんだ交通の2社があり、ほぼ同じ時間に出発する。町からは屋久杉自然館までしか行かず、自然館からは屋久島交通のバスに乗り換えて荒川登山口まで行く。宮之浦からのバスは席が半分も埋まらないような状況だったので、空いているなと感じていたのだが、自然館に着いて驚いた。既に行列が出来ている。この列は、個人やガイドの車でここまで来ている人たちだった。なお、荒川登山口までは一般車の進入が禁止されているので、ここで堰き止められてしまう。
屋久杉自然館で荒川登山口行きの切符を買って列に並ぶ。50人乗りぐらいのやや小ぶりのバスが来る。順番に乗り補助席も使って満席になると、そこで締め切られ、次のバスになってしまう。
屋久杉自然館発5時が始発で、その後20分おきに出発して消化していく。最悪1時間遅れぐらいになってしまうが、帰りのバスの時間も10時間ぐらいの往復の登山時間を考慮して運行しているようなので、少し遅れても支障はなさそうだ。
5時の始発に乗れたので、荒川登山口には5時35分に着いた。
トイレと朝食をここで取ってから出発することにした。
荒川登山口休憩所(帰路で撮影)
荒川登山口~大株歩道入り口(5時50分~7時56分着)
荒川登山口を5時50分に出発。
なお、11月になると、まだ日の出前なので真っ暗だ。登山道には街路灯などは全くない。季節と出発時間によるが、照明が必要だ。ただ、足下はトロッコ道で木道となっているので簡単な懐中電灯で十分だ。
出発して、すぐにトロッコ道が分岐している。ここを左折する。まっすぐ行くと山を下ってしまう。暗いのと人が前後に人がいなかったので若干迷ったが、ここさえ間違わなければとんでもないところに行くことは無い。
300mほど進むと明かりが見えた。岩をくり抜いたトンネルがある。トンネルは他に無いので、これが始点・終点の目印になる。帰りはここを通ればもう荒川登山口に近いことを教えてくれる。
6時半ごろになって、やっと、うっすらと周りが見えるようになってきた。淡々とトロッコ道を進む。
40分ほど歩いたところで、小杉谷小学校・中学校跡がある。現在は門柱が残っているだけのようだ。
さらに30分(出発から1時間10分)ちょうど7時ごろに、楠川分かれに到着。ここから白谷雲水峡方面に向かうことが出来る。少し先には休憩場所とトイレがある。(当日はトイレは故障していた)
三代杉
一代目、二代目、三代目と順に切り株の上に新しい杉が生えていて、一代目が樹齢1200年で1500年前に倒れ、二代目は樹齢1000年で350年前伐採され、三代目が樹齢350年で現在も生きているとのこと。2700年も前の発芽から今まで年代を重ねているたくましい杉だ。
三代杉を過ぎたころから杉林の雰囲気になる。
そして、やや太い沢を渡る。紅葉が始まっていた。
仁王杉(阿形)
仁王像の「あぎょう」が命名されている。杉のこぶの辺りが口が開いているように見えることから付いた名前とのことだが、相棒の口を閉じた吽形(うんぎょう)がいない。2000年の台風で倒れてしまったそうだ。
しばらく歩いて行くと、ヤクシカが登場。行きにも帰りにもヤクシカに会ったのはこの一回限りだった。人を怖がる様子も無くどいてくれない。立ち去るのをしばらく待って、ひたすら進む
トロッコ道は安房川沿いにあるので時々、安房川が見えたり、随所にある橋から沢が見える。ただ、上方は木が生い茂っていることで、周りの景色はあまり見えない。そんなとき、木々の間に山並みの見える場所がある。案内では翁岳とあるが、写真遠く三つ並ぶ中央の山、左が安房岳、右が栗生岳と思う。いずれも1800m級の山だ。ここを過ぎれば縄文杉への本格的登山道となる大株歩道入り口へはもうすぐだ。
大株歩道入り口に着く。5時50分に出て、7時56分着、約2時間6分ほどかかった。ここから橋の手前の木の階段が登山道の入り口だ。トロッコ道は橋を渡って続いているが、橋の先しばらくで終点となっており、そこに休憩所がある。トイレと水道がある。トイレはこの先には無いとのこと。
大株歩道入り口~縄文杉(8時出発~9時37分着)
8時ちょうどに登り始めた。登山の第一歩は、今まで歩いてきたトロッコ道から見れば、やや頼りないはしご段だ。登山道入り口の標高は920m。ここから縄文杉1300mの高低差380mを2.5㎞ほどの距離で登ることになる。
そして、すぐに山道になる。
翁杉(8時16分)
標高1000m 樹齢2000年、高さ23.7m、太さ12.6m
最初の杉は翁杉だ。この杉は縄文杉の次に太い木とのことだが、若干様相が違う。案内の数字のような高さが無い。調べると2010年9月に幹が折れてしまったのだという。よって現在は大きな幹が4~5mぐらいのところで無くなっている。自然の摂理というものなのだろう。
ウィルソン株(8時20分)
標高1030m、伐採時(樹齢2000年、高さ42m、太さ13.8m)
伐採理由は諸説有るようだが、400年ほど前に伐採されその切り株が現在に残っている。中は空洞になっていて、天を仰げる。写真をハート型に撮るポイントがあるが、普通に撮ると蝶々型だ。祠が中にあり、一人で入っていると神妙な気分になる。
大王杉(9時7分)
標高1190m 樹齢3000年、高さ24.7m、太さ11.1m
縄文杉の発見までは最大だったということで大王という名がついたそうだ。登山道の目前に位置しているので視野に入らなかったが看板を見て気が付いた。比較的素直に生えている杉に見えるが、よく伐採されなかったなという気がする。
夫婦杉(9時11分)
標高1230m 向かって左が妻、右が夫、それぞれ 樹齢1500年と2000年、高さ25.5mと22.9m、太さ5.8mと10.9m
10mほどの高さで、二つの杉がつながっており、このことから夫婦と呼ばれているとのこと。杉自体はつながってしまうことは良くあるようだが、この高さでつながるのは珍しいんだとか。
縄文杉(9時37分)
標高1300m、樹齢2000年、高さ25.3m、太さ16.4m
現存する日本一の杉とのこと。樹齢は諸説あるようだが、最近の科学的年代測定では2000年代とのこと。標高が上がるにつれ巨木が残っており、人の手が入りにくかったことに加え、形が悪いなどの理由もあるようで、なんとも因果なものです。
縄文杉は近寄ることはできず、デッキからの観察になり、りっばな南と北の二つのデッキがあり、二面から見ることが出来る。
高塚小屋(標高1330m)
縄文杉の南デッキから15分ほど登ると高塚小屋に出る。途中に休憩所のようなところがあり、その先に高塚小屋が有る。小屋の外にはトイレがぽつんと立っていた。無人の山小屋だ。山頂ではないので視界が開けてはいない。このまま進むと九州の最高峰の宮之浦岳(1936m)に続いているようだ。私はここで、元の道を下山する。
高塚小屋~荒川登山口(10時10分~14時27分)
高塚小屋を10時10分に出発、同じ道を通って下山する。
登りは有名な杉を目標に登っていたので、杉に目を奪われていたが、帰り道は少し他にも目を配りながら下りた。
大株歩道入り口には12時ちょうどに着、この入り口を8時出発したので、行き2時間10分、帰り1時間50分かっかたことになる。合計4時間。
大株歩道入り口から荒川登山道に戻る。約8㎞のトロッコ道を全く同じコースで戻ることになる。行きは暗かったので見えなかった所もあり、下って行くにつれ屋久島の山々なども見えてくる。
以下トロッコ道での景色など
途中、少し早めに着きそうなので、寄り道をしてみた。小杉谷にある「育成複層林自然観察道」というところに入ってみた。200mほどのコースだが、人の手を加えて再生した杉林で、若い木がうっそうと茂っており、今では人がほとんど入っていないのか、道があまり明確でない。迷うような奥まったところは通らないが、縄文杉まで行った人は時間があれば寄ってみてもいいかなぐらいの感じではあった。
寄り道時間は20分ほどで、そのままトロッコ道に戻り、下山を続ける。14時27分荒川登山口に到着。寄り道を含め、大株歩道入り口から2時間半ほど、全工程で寄り道分除けば往復8時間半ほどであった。
荒川登山口周辺の写真
まとめ
11月という時期であったので混雑しているというような状況ではなかった。皆、思い思いのペースで登山しているせいか、他の人との間隔は結構あり、渋滞や登りと下りでのすれ違いはそれほど無く、スムーズであった。紅葉は、所々で見かけたが、もみじ系統が少ないのか、赤より黄の葉が多かった。杉は大木で、かつ、伐採されなかったものなので形の変わったものが多く、面白い。気温もそれほど寒くはなく登山には心地よい時期であった。そういう意味では、11月頃の人の少ない頃を選んで行ったのは良かったと感じた。
山登りとしては難しいようなところはない。ただ、距離の大部分を占めるトロッコ道は長いことを考慮しておくべきだろう。本格登山に入る前に疲れてしまったり、帰りもやっと登山道を下りてきて、その後に長距離のトロッコ道を帰るのは歩くのに慣れていないと結構つらいかもしれない。
あと、天候には注意が必要だろう。今回、雨は降らなかったが、途中水の出そうなところもあった。雨具は必須だが、登山そのものを判断する必要があるかもしれない。
総じて、巨大な杉もさることながら、森の中を歩く爽快感や様々な歴史、山・川の変化、木々の植生の変化など豊富であり、行って来た価値は十分にあったと思う。
コメント