11月に白谷水雲水峡に行ってきた。宮之浦港に注ぐ宮之浦川の河口近くで合流する白谷川の上流に位置し、標高620mほどの所に入り口がある。コースとしては、時間と体力に合わせて3つが用意されており、軽いハイキングレベルから本格登山まで楽しめる。私は、ここから標高1070mほどの太鼓岩を目指した。途中には様々な大杉があり、苔むす森と呼ばれる神秘的な景色、心と体を癒してくれる小さな沢、そして太鼓岩から見る絶景など変化に富む。
今回登った太鼓岩のコースは中盤までは楠川歩道という江戸時代に作られた登山道があり分かりやすい。ガイドなしでも十分に楽しめる。途中の白谷山荘辺りから山道に変わり所々岩場もある。辻峠から太鼓岩までは距離は短いが急な傾斜となる。登山時間は入り口から太鼓岩まで約1時間45分かかった。なお、帰路は途中から原生林歩道をという山道の奉行杉コースを通ったため2時間50分ほどかかってしまった。奉行杉コースは特に起伏としては大きくないが、結構距離があるのと、部分的に整備されているものの、ほぼ完全な山道(けもの道風)なので迷わないよう注意が必要。また、沢を何カ所か渡るので雨の日は増水して渡れないこともあるようだ。距離に関しては、案内の数字から、太鼓岩コースが片道約2.5km、帰路の奉行杉コースを通ると片道約3.5kmになる。
白谷雲水峡入り口~さつき橋
宮之浦港からのバスは白谷雲水峡入り口を過ぎた先の駐車場まで行き降車。ちなみに帰りのバスは管理棟の前から出る。駐車場の近くにトイレがあるが、山道の途中には白谷小屋にしかトイレはないようだ。駐車場からバス道を戻り橋を渡った先が入り口となる。橋の上から眺める景色は既に山中の雰囲気を醸し出している。
入口を入り、しばらく歩くと大きな岩を登る。
二代杉
歩道に戻って、最初に現れるのが二代杉。切り株更新の様子がうかがえる。一代目は伐採され、その上に二代目の杉が覆い被さるように生長している。ちなみに、この先の奉行杉コースには二代大杉という別の杉がある。
さらに登ると飛龍橋があり、飛龍おとしを見ることができる。
橋は飛龍おとしを見るだけで、また歩道に戻り登る。しばらく登ると弥生杉コースと分かれる。今回は寄らなかったが、樹齢3000年の大木という。この弥生杉コースは歩道が整備されているようで、1時間コースとなっている。
次に、さつき吊り橋に出る。橋を渡らずまっすぐ進むと、奉行杉コース(約3時間)、橋を渡ると太鼓岩往復コース(約4時間)となっている。
楠川歩道
さつき橋を渡ると楠川歩道に出る。江戸時代に島津藩が屋根を葺く平木を年貢にして上納させていたため、屋久杉を伐採し、山中で平木に加工したものを運ぶための歩道として作られたとのことで、現在でもしっかりとした歩道となっていた。
なお、橋を渡ってからは、登りがややきつくなってくる。
周りの景色は川を右に見ながらうっそうとした森の中を登っていく。
くぐり杉
標高810m、高さ22m、太さ3.1m、樹齢 不明
小さな沢を石を伝って渡り、さらに楠川歩道を登っていくと、二本足で立ったようなくぐり杉が現れる。やや低いがくぐり抜けることが出来る。着生した元の木が朽ちて空洞になったようだ。
くぐり杉を少し登ったところにシカの宿という切り株がある。
この先、右に曲がると白谷小屋がある。トイレ休憩や食事場所として利用できるが、今回は寄らずに通過した。
七本杉
標高850m、高さ18m、太さ8.3m、樹齢 不明
何が7本なのか分からなかったが、途中で折れた幹から7本の枝が出ているということでこの名がついたそうだ。
苔むす森
名前の通り、苔むす森だ。うっそうとした木々の間からの木漏れ日に苔が光って見える。まるで違う次元に入ったかのような気がする。前後に人がいなかったこともあり、神秘的な感じが漂っていた。
武家杉・公家杉
二本の杉が並んでおり、左が苔の鎧をまとった武家、右が白銀の衣をまとった公家をイメージして命名したとのこと。
かみなりおんじ
雷に打たれた杉で、その姿をおじいさんにイメージして命名したとのこと
辻峠
ここから左方面に登ると太鼓岩になる。上りと下りのコースに分かれている。ここからは本格的登山コースなっている。距離は短いが登りは結構きつい。
辻峠からそのまま真っ直ぐ進むと縄文杉や荒川登山口につながるトロッコ道の楠川分かれに突き当たる。
太鼓岩
かなり傾斜の急な坂道を木々の間を登っていくと、頂上部分に巨岩が現れ、そこに登ると急に視界が開ける。屋久島の山並み、そして足下に安房川の河原の巨岩が白く見える。方向としては正面が小杉谷辺りになる。絶景にしばらく目を奪われた。
女神杉
太鼓岩の下りの途中にある。しなやかな姿からイメージして命名されたとのこと。着生している木々が羽衣のようにも見えなくもないが、むしろ着生する木々のエネルギーを感じる。
奉行杉コース
太鼓岩からは、本来のコースでは同じ道を戻るのだが、帰りのバスの時間まで余裕があったので、奉行杉コース通って帰ることにした。白谷山荘、くぐり杉を過ぎると分岐点がある。本来の奉行杉コースの順路とは逆回りとなる。
分岐点から太鼓岩往復コースで戻ると1400m、奉行杉コースは2500mと900mの大回りとなる。結構起伏が多く、一方的な下りではない。分岐点から出口まで1時間50分かかったので太鼓岩コースで戻るのとは1時間は余分にかかったことになる。
二代くぐり杉
コースに入ってすぐに現れるのがこの二代くぐり杉で、一代目は既に朽ち果て、一代目の上に育った二代目の根がトンネルのようになっている。この二代目も倒れてしまい、今は幹部分が空洞になって空が見える。現在は二代目の上にケヤキが育っているのだそうだ。
奉行杉コースの途中の道の様子。
一部木道のようになっているところもあるが、ほぼ自然のままの状態の道。途中に沢があり、石をつたって渡る。橋はない。
ツガの大木
奉行杉
高さ24m、太さ8.5m、樹齢 不明
見回りに来た奉行がここで休んだことが由来のよう。木材としては不適で残されたとのこと。
三本槍杉
高さ25m、太さ2.7m、樹齢不明
一代目は枯死して、その上に育った二代目が三つの枝を伸ばしている姿からの名前のよう。
びびんこ杉
木に隠れて全容が見えなかったが、この杉も二代目で、一代目の切り株の上から生長したとのこと、親の上に子が肩車していることをイメージし、鹿児島方言のびびんこ(肩車)と名を付けたとある。
三本足杉
その名の通り、根が3方向に分かれた杉だ。倒木の上に着生し、根が3方向に分かれたようだ。元の倒木は朽ちたのか、そのせいで浮き上がったように見える。年代的には比較的若い株とのこと。
二代大杉
高さ32m、太さ4.4m、樹齢不明
この杉も一代目の上に生長した二代目の株とのこと。太さは4.4mというが、根本付近はそれどころではない巨木だ。一代目は既に朽ちているようで中は空洞だ。通常太さを測る位置が切り株の上を覆った根として見られ、上方の幹部分が計られているためこの太さとなっているとのこと。
二代大杉に至るまでの景観は苔むす森にも似た景観である。
二代大杉からは通路も整備されている。ここを過ぎると、もうしばらくで終わりだ。太鼓岩から戻る楠川歩道からの道と合流する。管理棟の方へ最初に来た道を戻ると出口へと着く。
まとめ
白谷雲水峡は、弥生杉コースのように1時間で回れるコースもあれば、奉行杉コースの3時間、太鼓岩往復コースの4時間、今回私が行った太鼓岩と奉行杉をセットにすると5時間ぐらいと、様々なオプションが揃っている。体力や時間に合わせれば楽しみ方は色々ありそうだ。
ただ、弥生杉コースを除けば、基本的に山道だ。楠川歩道と言っても、岩を並べた道だから階段を上るようには行かない。苔の森辺りからは山道になる。辻峠から太鼓岩への登山は距離は短いが勾配は結構急だ。
奉行杉コースは急な上り下りは少ないものの決して楽な道ではない。林の中を進むので足下は良くない。あまり、人が通っていなかったせいか、道が判然としないところもあった。目印を見落とさないように注意が必要だ。
巨大杉という意味では縄文杉登山にはやや劣るが、太鼓岩の絶景や、苔の森の神秘的な景観、心地よい森の中の散策という点で十分価値があると思った。
宮之浦から近いこと、登山口からすぐ楽しめることなどから、時間にあまり余裕がなくても屋久島を堪能できるところと思う。
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