リストラ(希望退職)への対応

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最近は景気が好転して、団塊の世代が大量退職したことで人員不足とは言われていますが、産業構造が変化してきており、会社ごとに人員の過不足の度合いが違っています。このため一見景気が良くなってもリストラの動きは必ずしも収束しているわけではありません。

労働者は法によって原則守られてはいますが、実際に抜け穴は大きいので注意が必要です。

会社をやめることになる場合

①退職
定年退職や自ら退職を申し出た場合。自らやめる場合は事前報告が必要ですが基本的にはトラブルになることは少ない。なお、法的には2週間前に退職届を出せばいつでもやめることが出来ることになっています。

②解雇
会社が労働契約を終了させるもの。これは労働者の意思によるものではないので、解雇する合理的な理由があり、社会的に常識の範囲であることが必要です。
たとえば、就業規則に記載されている懲戒解雇に当たる行為を犯し、会社からの改善の要求があるにも係わらず繰り返すなどした場合に適用されます。ただ、それが妥当であるかは最終的には裁判などで解決しなければならないこともあります。

③会社の倒産
会社が無くなってしまうので対抗できない。問題は賃金の未払いがある場合にどのようにするかと言う点だけが争点になります。

④整理解雇
会社が、不況や経営不振で解雇せざるを得ない場合の人員削減に伴うもの。なお、整理解雇が正しく行われているかは次の項目が実施されていることが必要となります。しかし、この項目をすべて満足させることは非常に厳しく、また、必ずしも客観的に判断できる要素ではないため当然のように意見の相違が出てきます。このとき、労総者側に立った判断をされるのが一般的なのでハードルはかなり高いですが、認められれば確実に解雇することが出来ます。
(1)経営不振など会社経営上、人員削減をする必要性が十分かどうか
(2)解雇回避のために会社として努力をした結果であるかどうか
(3)整理解雇の対象者の人選が客観的・合理的でその運用も公正であるか
(4)労働組合や労働者に対して、解雇の必要性とその時期、規模、方法を納得させるよう説明を行ったか

⑤希望退職
経営不振や業務内容の変更、事業の移転などの理由で人員を削減する場合に④の整理解雇という方法も取れますが、実際には実現が難しいため、希望退職と言う方法を取ることができます。その名の通り、退職目標人数や退職条件などを提示して、退職希望者を募る方法です。これはあくまでも退職希望者を募り退職希望者が会社と退職を合意してやめるわけですから最も穏やかな方法となりますが、現実には募集人員に満たなかったり、逆に大量の希望者が出たり、優秀な人材の流出となるなどが問題になることがあります。

⑥希望退職という名のもとでの退職勧奨
希望退職は誰がやめるか分からないという問題があるため、実際には希望退職とは言っておきながら、やめさせる人・やめさせない人を決めて、やめさせる人に対し集中的に退職を勧め、同意させせようとするものです。
①~⑤までは会社としてのやむを得ない事情や退職本人の事情などある意味で明確に示されて合意するものなので問題は起こりにくいのですが、この退職勧奨に関しては会社の意思の方が圧倒的に強く、退職本人の意思はほぼ無視されます。このためトラブルも出やすく、かつ、退職者本人に対する精神的ダメージは計り知れないものとなることがあります。

以上のように会社をやめることになる場合を列挙しましたが、このうち⑥「希望退職という名のもとでの退職勧奨」の場合について対処方法等について考えていきたいと思います。

希望退職という名のもとでの退職勧奨の内実

希望退職を募らなければならない理由は、多くの場合、不況や業績不振による当該事業の縮小・廃止、国内外への事業の移転などトリガーとなる理由があります。実施しなければならないと判断すると、削減人員が見積もられ、退職条件(退職金や再雇用支援など)を決めて、希望を募るのですが、このとき実際には希望者を取捨選択しているのです。
すなわち、やめてもらう人・やめてほしくない人を選別し、あたかも希望したかの如く退職を迫ると言うことが行われているのです。

退職勧奨とは

退職勧奨とは会社が対象者に退職を勧め、その結果、対象者が「退職届」等を提出することで成立する退職の方法です。ですから表向きは本人がやめると言って来たので退職に同意したに過ぎないのだという根拠に基づいているのです。よって、法的にも抵触しません。しかも、これらの手順は専門の業者がいてその教育のもとに会社ぐるみで行っているのでなかなか対抗する方法が見つけにくくなっています。

退職勧奨は拒めるか

原則論で言えば拒めます。なぜならば、会社は退職を勧めているだけなので、同意せず「退職届」を出さない限り、会社はやめさせることが出来ないからです。
しかし、実際のところは、目標を決めて執拗に迫ってきたり、会社に居にくい状況や雰囲気作りをしたり、やめない限り事が解決しない気分にするなど、精神的に大きなダメージを与えるなどして、マインドコントロールして来ます。よって、その攻撃に耐えることが出来るかどうかにかかってきます。耐えられる場合はいつまでも拒否し続けて希望退職の期間が終わるのを待つ、という方法も可能性はあります。

退職勧奨であるか見分けるには

退職勧奨する場合に、通常、面談時に「あなたに退職勧奨をします」というようにダイレクトに言うことはありません。大抵の場合は、事業の不振などの理由で会社が退職希望者を募っている、ついては、あなたも希望退職の検討をして欲しい。なお、希望退職した場合には優遇処置もある・・・等々の話から切り出されます。そして、見かけ上の公平性を保つため対象部門の全員に面談を行うなど体裁を整えます。このため、初めの段階では自分が退職勧奨されているのか分からない場合が多いのです。
しかし、何回か面談を重ねていくと、希望退職なのか退職勧奨なのかを見分けることは出来ると思います。
基本的には、同じ話を繰り返られ、「希望退職に応じた方が有利だ」という話を持ち掛けたり、「今の職場は大幅削減されるので、同じポストにいられることはない」など、いる場所が無くなり、応じなければ希望しないようなところにあたかも行かされるような話をしてきます。

退職勧奨を逃れる方法

退職勧奨は合法となっているので、なかなか逃れる方法はないのが実情です。
前述しました通り、「やめない」と言い続けていくのもひとつの方法です。しかし、これは精神的もかなり強くなければ対応が難しいでしょう。
ただ、本当に精神的ダメ―ジを受けて不安定な状況になったら、迷わず心療内科などに受診することが必要です。この場合は医師と相談して、会社の攻撃をかわすことが出来るかもしれません。一時的な休養を必要とすることで希望退職期間をすり抜ける可能性があることと労災の申請で会社の行為の不適切さを露見させるという手もあるでしょう。
また、面談の方法が言葉を含め暴力的であったり、執拗に行われるような場合、あるいは自分の能力に合わない仕事に配置転換するような言動があった場合などは、会社の不当解雇に当たる可能性があるので、労働局の総合相談コーナーや弁護士などの専門家に相談をしてみることでも回避の可能性があります。もし、このようなおかしいと思うよう言動があった場合のために、面談の内容をボイスレコーダーのようなもので記録をとるなどの証拠づくりをしておく必要があります。

違法となり得る言葉や行為の例

1回言ったから即違法となるということではありませんが、最後の手段として労働局に相談する場合や裁判に訴える場合は、このような言葉や行為が違法であると判断されれば、そもそも退職勧奨の方法に問題があるとして回避することが出来る可能性があります。
一方で、会社側はこのような言葉を使わないことなど十分教育をされた上で臨んできますので、尻尾をつかむのはなかなか難しいかもしれません。また、録音するなどの証拠がなければ、「言っていない」と覆されてしまいますので、絶対に証拠が必要になります。
残念ながら、法に訴えても、このような事実・証拠がないと対応は難しいというのが実情なのです。

①人格を傷つける言葉
・・あなたは会社にとって必要なくなった
・・あなたには能力がない
・・あなたが会社にいるのは迷惑だ
②解雇と感じさせる言葉
・・やめろと言っているのが分からないのか
・・あなたの仕事はここにはもうない
・・やめてもらわないと困るんだ
③退職を強要する言葉
・・応募しないと仕事のない所に行ってもらわないいけない
・・同意するまではいつまでも続くからな
・・同意しなくても解雇はできるのだから
・・同意しないで解雇されたときは今の条件より悪くなるぞ
・・残っていたって仕事はないからな
・・会社の意向に逆らえばどうなるか分かっているだろうな
④差別的な言葉
・・女なんだから家庭にはいればいいじゃないか
・・どうせ腰掛で仕事しているんだろう
・・そろそろ結婚すればいいじゃないか
・・中高年は会社にはいらないんだ
・・体の悪い人は会社のためにならない
⑤関係のないことを理由にする言葉
・・君は有給が多いんだよね
・・みんなが残業しているのに一人で帰るようじゃ困るんだよね
・・子供さんのせいで仕事に精が入っていないようだね
・・夫婦で会社にいると風紀が乱れるんだよ
・・上司に反抗的だかからこうなったんだよ
⑥個人的なことを理由にする言葉
・・飲み会が多いようだね
・・家庭がうまくいっていないんじゃないの
・・借金を抱えていると聞いたんだが
・・ギャンブルにはまっているように聞いたんだが
・・職場から良く思われていないようだね
⑦強制的・いやがらせの行為
・・どなるなど大きな声で脅す
・・机をたたくなどして脅す
・・3人ぐらいの人数で圧力をかける
・・週に2度、3度と面談をすること
・・長時間に面談がおよぶこと(2~3時間以上)
・・残業時間から行い、かつ残業をつけさせないこと

もし、これらの事実や証拠があり、どこかに相談あるは訴えたい場合は、こちらを参考にしてください。

「やめる」という、もうひとつの選択肢

希望退職や退職勧奨で、考えておく必要があるのは、会社の意向に沿って「やめる」という選択肢もしっかり考えるということです。
突然、退職の話が出て、なぜ自分が・・?という疑問と共に、やめたくないという気持ちが出るのは当然のことです。
しかし、会社は方針として決めたことですから「やめさせる」ことをあきらめることはありません。抵抗することによって、時間切れになったり、法的機関を利用して自分の地位を守ることが出来るのは、現実的には「まれ」な場合が多いでしょう。
また、話がこじれて残ったとしても会社の態度が変わったりして目に見えず不利益をこうむったり、いにくい環境になってしまうこともあります。それ以上に会社に対する不信感は大きくなってしまいます。それに、抵抗していくことで精神的なダメージも大きくなり、まともに仕事に手が付かないなど将来を不安にする要素は色々と出てくることでしょう。

よって、一度冷静になって、会社の提示する条件を検討して見ることも必要だと思います。
・退職金の扱い(自己都合での扱いかどうか、割増金は出すのか)
・退職後のフォローはあるのか(ハローワークで自分で探せというのか、再就職支援はあるのか)
ぐらいしか、会社が提示する内容はないとは思います。
一方、失業保険は現給与の約6割が支給されますが、会社都合でやめるので、やや支給期間が延びます。

これらを計算して、どれまでの間に再就職する必要があるかを判断しておく必要があります。

やむを得ない、もしくは見切りをつけて会社をやめることにしたら、次の行動は出来るだけ早く取ることをお勧めします。退職金の条件が良かったり、失業保険をもらえるからと、しばらくのんびりしてなどと考えるのは禁物です。再就職はそう簡単ではありません。正社員で採用されても中途入社になりますので、給与は一般的には2割ぐらいは減ってしまいます。

まとめ

退職をするということは、定年や自己都合でやめる場合を除いて、どのような場合でも条件が良いものは現実にはまずないと考えた方が良いでしょう。また、会社はやめさせることが目的ですから、やめてしまえばその後は、一部支援期間があるにしても、無視です。非常に冷徹なものだと言うことを肝に銘じておく必要があります。このことは自ら退職後の道を切り開かなければならないことを意味します。
ですから、希望退職や退職勧奨のような状況になってしまたら、第一段階は時間を稼ぐことです。早急に結論を出すのではなく、会社の条件を吟味することや、出方を見ていく必要があります。会社の出方によっては徹底抗戦という方法に向かうのか、受け入れるのかの判断をすることになりますが、これは自ら考えてするしかありません。
一人で悩まず、家族や外部への相談も必要でしょう。外部の相談機関に妥当性を相談することも出来ますので臆せず利用してみるといいと思います。

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